店長日記

向田邦子・・・・・・・・その2
2012年05月08日
「隣の女」の続きです。
壁一枚の向こうから聞こえてくる男の声。「上野、尾久、赤羽、浦和……」谷川岳までの停車駅を男は呟いています。一方でサチ子の家で聞こえているのはミシンの音。桃井かおり演じるサチ子は白いエプロンをしてミシンを掛ける時、田原俊彦の恋はDoを歌っていた気がします。その当時、流行っていたからといえばそれまでですが、恋を夢見ていたのかもしれません。
ある日、峰子は別の男と心中し未遂に終わります。サチ子にしてみれば、あり得ない現実。第一発見者ということでテレビ局からインタビューを受けた時「私、平凡な主婦だからさ。・・・・・・・」と答えます。置かれている立場の違いを強調した台詞のようにい感じます。だからこそ外へ飛び出したいという願望をいつも抱いていたのかもしれません。サチ子も、ある日、思い切った行動に出ます。壁一枚の向こうから聞こえてくる男に恋をしていたのかもしれません。麻田に峰子の心中事件の報告のため会いにいくのです。もちろんこれは口実。1回きりの恋を楽しむのですが、家路についたサチコは自分のバッグに見知らぬお札が入っていたことにショックを受けます。もちろんお金の主は麻田。惨めさと切なさが募り、再び麻田を追いかけます。麻田はすでにニューヨークに旅立った後でしたが「谷川岳にのぼ」という書き置きを夫に残し、自もニューヨークへ。麻田に再会し、何日か過ごした後、サチ子は帰ります。一所懸命ミシンを掛けながら生きていく人生を選びます。
一方で、浅丘ルリ子演じる峰子がサチ子にお金を借りに来る場面があります。サチコがつい出したお札は、麻田がサチコの知らぬ間にサチコのバックに忍ばせたもので赤い口紅がついています。すかさず峰子が「おかしなことあるもんねえ。世の中にはあたしと同じ癖のある女がいるのかな」・・・「あたしね、惚れた男に貢ぐとき、こっちもおべんちゃら言ってお酒ついで儲けたお金ですからねえ。サヨナラの挨拶代わりに、お札の端のところにこうやって口紅つけてバイバイするのよ」
この後、峰子は、何かを見透かしたようにサチ子をみるのですが。
同じ間取りなのにこんなにも違う隣。隣の芝生は良く見えるのだけど、実際に踏み込んんでみると、そう居心地の良いものでもないようです。
51歳で早逝した向田さん、今の彼女と同じ世代になり、何となくわかるものがあります。結婚というものに憧れつつも、第一線でバリバリ仕事をしていた彼女。心のどこかでは、ひとりの女性として淋しさもあったのかもしれません。
昭和が終わり平成となりました。主婦と水商売の境目が壁でなく、カーテンくらい緩いものになった気がします。
谷川岳に登りもどってきたサチ子、麓まで行った夫。
いづれにせよ「登るよりもどるほうが勇気がいるよ」と語りかけた向田さん。そういえば「通りゃんせ」の歌詞にもあったような。
あの世からこの世を、どんな思いで向田さんは見つめているでしょうか。私には少女時代、鹿児島で過ごした向田さんが、「やっせん」と言いながら笑っているような気がしてなりません。
壁一枚の向こうから聞こえてくる男の声。「上野、尾久、赤羽、浦和……」谷川岳までの停車駅を男は呟いています。一方でサチ子の家で聞こえているのはミシンの音。桃井かおり演じるサチ子は白いエプロンをしてミシンを掛ける時、田原俊彦の恋はDoを歌っていた気がします。その当時、流行っていたからといえばそれまでですが、恋を夢見ていたのかもしれません。
ある日、峰子は別の男と心中し未遂に終わります。サチ子にしてみれば、あり得ない現実。第一発見者ということでテレビ局からインタビューを受けた時「私、平凡な主婦だからさ。・・・・・・・」と答えます。置かれている立場の違いを強調した台詞のようにい感じます。だからこそ外へ飛び出したいという願望をいつも抱いていたのかもしれません。サチ子も、ある日、思い切った行動に出ます。壁一枚の向こうから聞こえてくる男に恋をしていたのかもしれません。麻田に峰子の心中事件の報告のため会いにいくのです。もちろんこれは口実。1回きりの恋を楽しむのですが、家路についたサチコは自分のバッグに見知らぬお札が入っていたことにショックを受けます。もちろんお金の主は麻田。惨めさと切なさが募り、再び麻田を追いかけます。麻田はすでにニューヨークに旅立った後でしたが「谷川岳にのぼ」という書き置きを夫に残し、自もニューヨークへ。麻田に再会し、何日か過ごした後、サチ子は帰ります。一所懸命ミシンを掛けながら生きていく人生を選びます。
一方で、浅丘ルリ子演じる峰子がサチ子にお金を借りに来る場面があります。サチコがつい出したお札は、麻田がサチコの知らぬ間にサチコのバックに忍ばせたもので赤い口紅がついています。すかさず峰子が「おかしなことあるもんねえ。世の中にはあたしと同じ癖のある女がいるのかな」・・・「あたしね、惚れた男に貢ぐとき、こっちもおべんちゃら言ってお酒ついで儲けたお金ですからねえ。サヨナラの挨拶代わりに、お札の端のところにこうやって口紅つけてバイバイするのよ」
この後、峰子は、何かを見透かしたようにサチ子をみるのですが。
同じ間取りなのにこんなにも違う隣。隣の芝生は良く見えるのだけど、実際に踏み込んんでみると、そう居心地の良いものでもないようです。
51歳で早逝した向田さん、今の彼女と同じ世代になり、何となくわかるものがあります。結婚というものに憧れつつも、第一線でバリバリ仕事をしていた彼女。心のどこかでは、ひとりの女性として淋しさもあったのかもしれません。
昭和が終わり平成となりました。主婦と水商売の境目が壁でなく、カーテンくらい緩いものになった気がします。
谷川岳に登りもどってきたサチ子、麓まで行った夫。
いづれにせよ「登るよりもどるほうが勇気がいるよ」と語りかけた向田さん。そういえば「通りゃんせ」の歌詞にもあったような。
あの世からこの世を、どんな思いで向田さんは見つめているでしょうか。私には少女時代、鹿児島で過ごした向田さんが、「やっせん」と言いながら笑っているような気がしてなりません。