店長日記

歌舞伎

2011年11月04日

 先月、中村勘三郎さんの歌舞伎「俊寛」、「棒しばり」が鹿児島であり、伯母と観に行きました。実は歌舞伎というもの、十代の頃一度観たきりで、今回で二度目です。

「棒しばり」は狂言で御馴染の太郎冠者、次郎冠者もので、主人が留守の間ふたりが酒を飲まぬように縛り外出するのですが、そこは太郎冠者・次郎冠者も心得たもので縛られても上手に酒を飲み、良い気分になって踊るという喜劇です。さて,能や狂言をもとにした歌舞伎を「松葉目もの」というのだそうです。私は、太郎冠者・次郎冠者は狂言だけと思っていたので歌舞伎でも上演されることを初めて知り、とても勉強になりました。今回は棒で縛られる次郎冠者を中村勘太郎さんが演じ、手を使わずにとても上手に酒を飲み、踊りも器用にこなしていました。初心者でもわかりやすく楽しめましたが、体力のいる演目だとも感じました。

「俊寛」は近松門左衛門「平家女護島」からのものだそうです。筋書きとしては、俊寛が平家打倒の陰謀に加わったとして、丹波少将成経と平判官康頼とともに喜界ヶ島に流されます。ある日、成経が、この地に住む海女千鳥と結婚することを打ち明け、俊寛と康頼の前で祝言の盃を交わしていたところ大きな船がやってきます。健礼門院の懐妊により恩赦の命が下り、上使の瀬尾が平清盛からの赦免状を読みあげるのだが、そこには俊寛の名はない。俊寛は絶望のあまり泣き叫ぶのだが、そこへもうひとりの上役である基康が船から降りてきて平重盛から俊寛への赦免状を読み上げる。赦免された三人は手を取り合って喜ぶのだが、今度は船には3人しか乗せられないので千鳥を乗せるのは無理とのこと。千鳥も船にと必死で訴える俊寛に,瀬尾は、4人目は無理だと冷たく言い放つ。
さらに瀬尾は追い撃ちをかけるように、俊寛が流されている間に清盛の命により俊寛の妻の東屋が殺され、しかも斬り捨てたのは瀬尾自身だと話す。都で妻と再び暮らすことを夢見ていた俊寛は悲しむが、逆に都に未練がなくなり、自分の代わりに千鳥を乗船させるように瀬尾に懇願する。しかし、瀬尾は拒絶し、俊寛を罵倒する。思い詰めた俊寛は瀬尾の刀を奪い斬り殺す。そして瀬尾を殺した罪によりここに止まる代わりに千鳥を船に乗せるように基康に頼む。こうして千鳥の乗船が叶い、俊寛ひとりが島に残るというもの。初めは、淡々と見送るものの、船が動き出すと、取り残された孤独感が一気に溢れ、船を追うが段々船は見えなくなり、なおも岩山に登り、船の行方を追うけれども、もう船の気配はなく、絶望した俊寛の姿のみが映し出され幕。
 と、こんな様子でしょうか。流人とはいえども勘三郎さんが演じるとまず品が良いです。それから赦免された喜びと、自分が覚悟の上で望んだことというものの、ひとり残される絶望。その極端を本当に上手く表現されていました。瀬尾の刀を奪って斬りつける場面では浄瑠璃に合わせて斬り合いが行われ、ここもなかなか見ごたえがあります。
 また、掛け声の大切さも実感しました。「大向こう」と呼ばれ、劇場公認の会もあるそうです。今回も「中村屋」の声が飛び、素人の私は、その声に合わせて拍手をしたり、ここが見せ場なんだと思ったりと、なかなか有難いものでした。
また行ってみたいと思いますが、片岡仁左衛門さんもいいないと思います。
 
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